今回ご紹介する本がこちら⇩
『LIFE SHIFT2 ー100年時代の行動戦略ー』
- 著者:アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン
- 発行:出版社 2021年11月11日 初版発行
- ページ数:327
- 定価:(本体1800円+税)
- 難易度:★★★★☆(難しい)
- ジャンル:ビジネス書
あのLIFE SHIFTの最新版が出た!ということで、さっそく書店に行ってみたのですが、前著を読んだわたしには「LIFE SHIFT2」 が一際目立って見えました。
「気になっているけど、どんな内容なのか概要を知りたい!」
そんな方へ向けて、私なりの要約を書きました!
本記事が皆さんのお役に立てたら幸いです。
こんな方にオススメ
- 前著を読んだことがあり、興味がある
- 100年時代を生き抜くための方向性が知りたい
- 将来への不安を取り除きたい
- 未来がどうなっていくかを知りたい
『LIFE SHIFT2』てどんな本?要約・書評
この本は簡単にいえば
未来について考えるための本
です。
そして最大のテーマは、
この人生100年時代に、個人と社会がどのように行動すれば良いのか?
という点になります。
著者はアンドリュー・スコットさんと、リンダ・グラットンという方で、2人による共著という、前作から続くスタイルです。
スコットさんは経済学の専門家、グラットンさんは心理学の専門家、この2人によって経済学と心理学の両方の視点で書かれています。
ちなみに、前著を読んでいない方でも楽しめるような内容になっていることをここで強調しておきます。
全体の構成は、大きく三つに分けた三部構成になっています。
各部ごとに私なりの要約を書いていきます。
第一部
AIやロボット工学といったテクノロジーが日々驚異的な進化を遂げていることは、誰もが実感していることでしょう。
そして昔よりも人間の寿命がどんどん伸びていることも同様です。
第一部では、このテクノロジーの進化と長寿時代の到来という2つにおいて、様々な事例を用いながら考察しています。
まず、テクノロジーの進化について考えたときにどうしても気になるのが、機械は私たちの雇用を奪うのか?という問題です。
これについて次のような事例を挙げています。
- 自動運転車
- 製造業のロボット
- サービス業の接待ロボット
- ドローンで配達
- 介護ロボット
それぞれの事例から言えることは、いきなり仕事を奪われるというわけではなく、まずは仕事を部分的に補助してくれる形でロボットが使われていくことが予想されます。
この流れを踏まえたうえで、私達はどう行動していけば良いか?を考えなくてはいけません。
そこでさらなる問いとして、失業しないためにどのような能力が必要なのか?を考えていきます。
これについて、本書での答えは『より人間らしい活動を行う能力』としています。
具体的には
- 人と人とのやりとり
- ケアと思いやりが必要な活動
- マネジメントとリーダーシップ
- 創造とイノベーション
などです。
これに対局する能力が『定型的でプログラム化可能な課題を実行する能力』であり、まず機械に取って代わられたものがこれです。
そうすると私達の親世代のように、1種類のスキルで職業人生を乗り切れるとは考えにくいことが理解できるでしょう。
次に長寿時代の到来という高齢化の流れを見ていくために、次のような事例を挙げて根拠を示しています。
- 世界最高記録、ジャンヌ・カルマン(フランス人女性)122歳
存命中の世界最高齢、田中カ子(たなかかね)1903年1月2日生まれ- ベストプラクティス平均寿命は、日本人女性の87歳
どうすれば、長く健康であり続けられるのか?
を考えるために、次の4つについて触れています。
- 平均寿命と健康寿命
- 長生きによるリスク
- 老化の減速、逆転の可能性
- 老化の治療の可能性
そして長寿による家族と地域社会に及ぶ影響について次のような傾向がある、としています。
- 世界中で女性の教育レベルが向上するのに伴い、出生率が下がっている。
- 世界の平均年齢の上昇(1950年で24歳、2017年で30歳)
- 先進国の人口減少
- 所得水準の上昇により栄養状態、教育水準、医療水準が高まり、それによって出生率を下げ、寿命を延ばす。
これらのことから、私達の将来では65歳以降も働かなくてはいけないだろうと予測できます。
そのためには、70代80代の人も働きやすいように企業の制度を変えていくことが必要でしょう。
また、高齢化が進むと医療費支出は増えていくことが予想されます。
そして医療の内容は、感染症から加齢による病気へと移っていくでしょう。
したがって政府は、予防医療重視に転換しなくてはならないし、医療システムは医療提供のあり方を変えなければなりません。
更なる問題として、世代間関係についても触れられています。
- 若い世代が少数派であること
- 親世代に対しての大きな義務感
- 税負担と年金給付の面での質の悪化
つまり世代間の不公平が懸念されるわけです。
それを解決するには、年長世代が約束された通りの年金を受け取れるようにすると同時に、若い世代がスキルを磨き、チャンスを得られるように、社会の仕組みを変える発明が必要です。
それを通じて、若者と高齢者が長寿化の重荷とチャンスの両方を公平に分かち合うようにすべきだと訴えています。
これらは極めてリアルで現実的な問題ですが、解決策をもたらすのはあくまでも社会的発明であり、要するに、社会規範と慣習と制度を根本から作り変える、ということが必要です。
今までは、誰もが3ステージの人生を送るのが当たり前だった。しかし、3ステージの人生ではなく、マルチステージの人生が当たり前になるだろう。
上記のように、本書では『3ステージの人生』から『マルチステージの人生』への移行が予想されています。
この『3ステージの人生』とは、
- フルタイムで教育を受ける段階
- フルタイムで仕事に携わる段階
- フルタイムで引退生活を送る段階
という3つのステージ(段階)によるシンプルな人生の生き方を指しています。
そして『マルチステージの人生』という言葉の意味は、前述の3つのステージに縛られることなく、大人になってからの生涯学習などによってスキルを獲得したり、本業をしながら副業したり、65歳以降も働くという、多様なステージを経験していく生き方のことを言っています。
これについては、前著『LIFE SHIFT』から引き続き書かれていることで、本書よりも前著のほうが詳しく書かれていました。
要するに、一つの職業だけで生きていける時代は終わり、多様なスキルを身に付けながら70歳80歳になっても働いていくことが普通になっていくと予想されています。
そのように生きていくには、人生の途中で人生のあり方を設計し直すことが必要だとしています。
また、次のようにも書かれています。
つまり、満足のいく生活水準の確保と、人間としての可能性の開花の両方を可能にする社会的発明を実現させる必要がある。
働き方の常識の変化にともない、社会のあり方も変化する必要があるということです。
第二部
先ほど『マルチステージの人生』の話をしましたが、人生で経験するステージの移行回数が増えれば、いくつかの重要な問いに向き合わなくてはなりません。
- 「私はどのような職につくのか」
- 「どのようなスキルが必要になるのか」
- 「どのようなキャリアを築くのか」
- 「老いるとはどういうことなのか」
これらを踏まえて第二部では長寿の時代に適応するために一人一人がとるべき行動を論じています。
行動を変えるには、まずは考え方を変えよう!ということで、『年齢』『時間』『仕事』についての考え方が語られています。
『年齢』に対する考え方を変える
人がどのように老いるかはその人が取る行動、周囲の環境や置かれた状況、遺伝的要因などによって一人一人違います。
長寿化に合わせて年齢に対する考え方を変えるためには、通常の暦による年齢で考えるのではなく、年齢を可変性があるものと考える必要がある、としています。
それを具体的にいうと次の3つ。
- 生物学的年齢(肉体がどれくらい若いか)
- 社会的年齢(社会でどのように扱われているか)
- 主観的年齢(自分がどの位老いている、もしくは若いと感じているか)
つまり年齢の可変性を前提に人生のステージのあり方を変えていこうということです。
未来の『時間』をどう考えるか?
そのために「鳥の目型」の視点を持つことが紹介されています。
別な言い方をすれば俯瞰的な視点を持つということ。
上空から地上を見下ろすように、時間軸を見るという感覚であり、そうすることで過去と現在と未来の全ての時点が等しく重要に感じられる、と説明されています。
その利点は、未来の自分を大切にし未来の選択肢を広げるための投資を積極的に行うようになることです。
つまり、人生のある時点で取る行動が、将来の時点と結びついていると言う認識を強く持てるようになるので、未来に好ましい結果が生じる確率を高められる行動を今取れるようになるということ。
そして、複利の魔法を味方につけることが有力です。
複利については資産運用だけでなく、スキルや健康や人間関係の投資など、時間を味方につけられるタイプの他の投資でもそう。
70代80代まで働くとすれば、例え40代50代でスキルを身に付けるなどの投資をしても、恩恵を受けられる期間が十分に長いと言えます。
『仕事』に対する考え方を変える
これまでは1つの職業で生きていくなかで、自身のスキル向上させるとき、それを職場が協力してくれるのは普通のことでした。
しかしこれからの時代では、自分の年齢や世の中の状況によって職を変えていったり副業をしたりすることが当たり前になります。
そのため、スキルを向上させたり、転職や副業の計画を立てたり、情報収集、資金面の準備などは自身の役割になります。
したがって、一人一人が責任を持って主体的な選択を行う必要があるということです。
その選択を行うために、自分の未来のプランを思い描くことが重要です。これを本書では「ありうる自己像」を描き出すという表現をしています。
良い人生とは?
自分がどういう人生を生きたいか?を考えるうえで、そもそも自分にとって良い人生とは、幸福とはなんなのでしょうか?
偉大な哲学者や経済学者の言葉を例に挙げながら考察していくなかで、次のようないくつかの結論に至っています。
- 所得が高いと、人生の充実感は高まるが、日々の幸福感は高まらない
- 長寿化時代を生きる上でお金は必要だがそれ自体が幸福と直結するわけではない
- 自らの可能性を開花させ、人生に意味を見出すことが幸福に繋がっていく
- 他の人とつながる事は、良い人生を送り、人生で直面する試練に対処するための土台になる
長い人生を生きる上では金銭面の安定も重要だが、将来の生活資金を確保すること以外の活動がもたらす恩恵も見落としてはならない。人生の目的の追求や、様々な活動への参加、健康、パートナーとの関係といった要素のことだ。
自分はどのような人生を生きたいか?
社会に出てすぐの時期や20代では、自分がどのように生きたいかが決まっていないという場合は多いのではないでしょうか。
昔と違って、マルチステージの長い人生では、狭い選択肢の中を突き進むよりも、若い時期に時間を割いて実験し、どのような道が自分に適しているかを知っておくことは重要です。
こういった探索を行うのはこの時期を逃してしまうと、結婚後や特に子を持つ親になってからでは、なかなか難しいというのが現実です。
生涯にわたって学び続ける
3ステージの人生では、学習は最初のステージで行うものでした。
しかしマルチステージでは、自分が何をしたいかによって何を学べば良いのかを知り、そのために必要なスキルを習得しなくてはなりません。
したがって、何歳でも学ぶ必要があるという時代になっていくでしょう。
ただし、大人の学習は容易でなく、学生のときのような恵まれた環境とは違っています。
- 子供の頃の学びではフルタイムで学習に取り組む環境に身を置いているが、大人の学習ではそうでは無い。
- 大人は厳しい環境で学ばなくてはならないケースもある。
- 職を失ったり、移行を余儀なくされたりするなど、極度の重圧にさらされている中での学習。
- 学習の時間を捻出しなくてはならない場合。
それでも、大人を対象とする教育産業は、今急速に成長しており、オンライン教材やオンライン講座も爆発的に増加しているとのことで、今後ますます発展していくでしょう。
また、「結晶性知能」について書かれていて、これは、時間をかけて蓄積されていく情報や知識、知恵、戦略のこと。
この結晶性知能は年齢を重ねるにつれて強化されるタイプの知能、ということで、仕事が人工知能(AI)に代替されていくことを考えても、人生の後半には結晶性知能が求められるような仕事をしていくのが良いでしょう。
家族やパートナーとの支え合い
人間関係によって幸福度と人生の満足度は大きく左右されます。
したがって、人間関係を維持し、それに投資し続けることは、今後もますます重要になってきます。
というのも、長寿化と人生のマルチステージが進むにつれて、家族のあり方が変わっていくことが予想されるからです。
その変化の例として、結婚の時期が遅くなることや子供の数が減り、高齢の家族や親族が増えることが挙げられています。
そして、その先にある問題として世代間の摩擦について懸念されています。
これはつまり、長寿化により、同時にいくつもの世代が共存するようになるので、人生のあり方に関する世代間の考え方が食い違うということです。
これらのことから、家族の機能を見直すべきだと主張されていて、下記のように書かれています。
家族を長期的な人間関係の核と位置づけ、家族のメンバーが資源を共有することにより、長い人生を生き抜くのを助け合い、いざと言う時に支え合えるようにしたいと思えば、家族の機能を見直すことが避けて通れない。
家族の機能の利点としては次の通り。
- 優しく支えてくれる家族は、世界の激変に対する緩衝材の役割を果たせる。
- 家族のメンバーが時間やその他の資源を共有できれば、誰かが病気になったり職を失ったりしたときの保険になるし、育児や介護を行いやすくなる。
このように、支え合いの大切さを説くと同時に、コミュニティーに関わることの有効性についても書かれています。
その一例が次の文章。
コミュニティーに深く関わっている人は、長生きする確率が高く、生きがいを持つことによりアルツハイマー病の発症リスクと死亡率も下がることがわかっている。
現在では、テクノロジーの進化によって、インターネット電話やSNSの利用が当たり前になってきています。
こういうものを利用し、他の年齢層の人たちと接する機会を増やすことは重要であり、そのために今のうちからコミュニティーを形成しておくことを勧めています。
第三部
第三部では、経済と社会の仕組みがどのような大転換を遂げるべきかを指摘しています。
ここでは、企業の課題、教育機関の課題、政府の課題の3つについて書かれています。
企業の課題
マルチステージの生き方を可能にするために入社年齢を多様化するだけでなく、60歳や65歳ではなくもっと長く働けるようにすべきでしょう。
しかし、現在の企業では、在職年数が長くなるにつれて給料も上がっていく傾向があるので、高齢の社員は高給取りになりやすく、解雇されやすいのが現状です。
したがって、新しい退職の形を作り出すことや、年齢と昇進と給料の関係についても改善していかなくてはならないでしょう。
また、これまで通り学びを支援するだけでなく、育児や介護に直面している働き手の支援をするために新たな仕組み作りが求められます。
そして長寿化が進むにつれて高齢の働き手が減っていくのに対し、新たに加わる若い働き手は少ないことから、人手不足の時代が到来すると予想されます。
このことから、これまでより幅広い層の働き手を採用する必要があるでしょう。
教育機関の課題
平均寿命が伸び、職業人生も長くなれば、人生で必要とされる教育の量は多くなるので、人生の序盤だけでなく、人生の様々な段階で学ぶことが望ましい。
また、生涯にわたって学び続けることを考えると、人生の序盤で受ける教育では、特定のスキルや知識を身に付けることよりも、ずっと学び続けるための土台作りに重点を置いた方がいいでしょう。
そして、企業への入社年齢が多様化するのと同じように、教育機関への入学年齢と職業年齢も多様化させていくべきです。
今後、生涯学習が一般的になれば、幅広い年齢層に教育が提供されるだけでなく、様々な年齢層が混ざり合って学ぶ状況が予想されます。
したがって新しい教育のあり方として、これからの大学は、生涯学習を支援し、年長の学生のニーズと動機をもっと重視すべきでしょう。
政府の課題
今採用されている政策は、 3ステージの人生と70年間の人生を前提にした制度があまりに多く、時代遅れなのが現状です。
政府は発想を変えて、マルチステージの人生と100年時代に合った政策を実行する必要があります。
挙げられている政府が取り組むべき課題は次の3つ。
- 人々が将来必要となるスキルを身に付ける道筋を提供すること
- 人々が健康に歳を重ねるのを支援すること
- 長寿経済を築くこと
また、私たちには政府を動かすための手段があります。
産業革命の時代には、労働組合や労働運動が重要な役割を果たしました。
これを例に挙げ、21世紀の世界でも同様の社会運動を盛り上げることを提案されています。
『LIFE SHIFT2』を読んだ感想・気付き
本書を手に取り、帯を読んでみると「あなたの将来の選択肢と老い方は、今、どう行動するかで決まる」と書かれていました。
自分が今後どう行動すべきかを考える指針が得られればという期待を持ちつつ本を開きました。
読む直前の予想として、コロナ禍の現在に発売された書籍なので、コロナに関する記述は多いかな?と思いましたが、読んでみるとそこまでではなく、軽く触れられている程度だなという印象を持ちました。
内容としては、いろんな選択肢を考察付きで提案してくれているので、自分の考えを深めるためにとても役に立ちました。
そのなかで、自分的に興味深くて心に刺さったことが書かれていました。
職業人生が比較的短かった頃なら、過酷なストレスを伴う仕事は、十分な給料を受け取るために割の合う規制とみなせたかもしれないが、職業人生が長くなれば、そのような仕事をずっと続けるのには無理がある。そこで、活力を再受診することができて、多くのことを学習できる仕事に就くことが非常に重要になる。
つまり、65歳以降も働くなら肉体労働は無理だから、いろんなスキルを勉強をする必要があるわけですね。
人生の最後から逆算することで自分が今現在から死ぬまでの期間というものを再認識し直し、生きる覚悟を再設定できたこと。
これが本書を読んだことによる最大の利点です。
現在の自分は肉体労働を仕事にしているので、70代80代になっても働けるためのスキルを模索しつつ勉強をしながら、転職を意識する日々を送っています。
『LIFE SHIFT2』の著者紹介
アンドリュー・スコット Andrew j. Scott
ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者であり、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄養委員会メンバーも務める。邦訳された著書に『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』がある。
リンダ・グラットン Lynda Gratton
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。世界で最も権威ある経営思想家ランキングであるthinkers50では、世界のビジネス思想家トップ15にランクインしており、2018年には、安倍晋三元首相から「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。著作である『ワーク・シフト』や『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』は日本でベストセラーとなった。
著者紹介より
『LIFE SHIFT2』の商品リンク
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