
どうも! ロボットのように働くアラフォー会社員、ろいどです!
私は21年間、TN-Pの更新試験を合格し続けて、今現在もこの資格を維持しています。⇩

この経験を活かして、この記事ではTN-Pの実技試験を合格するための具体的なコツを紹介していきます。
「試験の練習をしているけど上手くいかない」
「試験を控えているが自信が無く不安」
と悩んでいる方向けの記事です。
実技試験での行動手順に沿って解説していきます。
TN-P 初心者向けの攻略法!
材料の加工
材料を磨く人もいれば磨かない人もいて、どっちのほうが良いのか迷う人もいると思います。
材料は磨いたほうが良い
材料の磨きはどちらかと言えばやっておいたほうがいいです。
しかし、必ずやらなくてはいけない訳ではありません。
磨かないほうがやり易いという人もいるからです。
磨くことでどう影響があるかというと、若干ですが材料が溶け安くなります。
感覚的な話になりますが、ウィービングした時の溶融池(プール)の動きがスムーズになります。
ただし、溶融池の動きは溶接電流にも左右されます。
1度練習で、磨いた材料とそうでない材料のときで溶接してみて、違いを体感してみると良いと思います。
その際は、電流の大きさは同じに、そしてタングステンの研ぎ具合も同じ状態で比べて下さい。
溶融池の動きが何に影響するかというと、溶接ビードの幅が綺麗に揃え易いかどうかが変わってきます。
材料が磨いてあるかどうかで溶けやすさが変わりますが、電流の大きさでも溶けやすさは変わります。
なので、この両方の度合いの兼ね合いによって自分にとってのやり易さは変わってきます。
練習では、この兼ね合いの丁度良い所を見つけておく事が大事になってきます。
とは言っても個人的にはやはり、磨いておく方をオススメします。
なぜなら、溶接していくなかで、時間と共にタングステンの先が傷みます。傷むと材料が溶け辛くなってきます。
これを計算に入れる訳です。
溶接スタート時になるべく溶けやすい状態にして溶接していけば、多少タングステンの先が傷んでも溶接し続けることができます。
そうすることで、タングステンを交換する回数をも減らすことができます。
一方、材料を磨かないということは、その分だけ材料が溶け辛いので電流を高くして溶接することになります。
電流を高めにして溶接するということは、それだけタングステンも傷みやすくなるのです。
この辺の事が頭に入っていると、タングステンの交換のタイミングや溶接電流の調整を、より感覚的に行えるようになってきます。
材料(試験片)の開先は尖らせておく
開先は鋭いほうがいいです。
なぜなら溶け安いからです。
こうすることで初層溶接したときに、『裏側が溶けていなくて筋が残ってしまった』ということを心配する必要がなくなります。
ちなみに私の知る限りでは、TN-Pの試験はドン付け(ギャップを開けずにくっつけた状態)でみんな溶接してます。
ギャップを開けてもリスクしか無いです。
試験なので不安要素は少しでも無くしておきましょう。
仮止め
試験会場では仮止めブースが用意されていて、そこの設備を使って仮止めするのが一般的かと思います。
仮止め前に使う設備には十分注意しましょう
とくに試験の順番が最初の方だったりして、使う設備(溶接機)がその日に初めて使う場合は要注意です。
ブレーカーをはじめ、電源、アルゴンガスの元栓、電流調整など、あらゆるセッティングからスタートという場合もあります。
この場合でも、焦らず落ち着いて準備しましょう。
決してイラついたりしてはいけません。平常心、平常心!
通常の場合でも必ず次のことをチェックしましょう。
要チェック
- アルゴンガスの流量
- アースの接続
- 初期電流、溶接電流、クレータ電流
- アフターフロー時間
私自身の経験ですが、前に溶接機を使った方の嫌がらせなのかどうかはわかりませんが、電流やガスなどの設定がメチャクチャにされていたことがあります。
したがって、設備をチェックせずに仮止めを始めるというのはかなり危険です。
なかでもあるあるなのが、
・アルゴンガスのバルブが閉まっている
・アフターフロー時間が極端に短い
この2つはよくあります。
アフターフロー時間は最低3秒は欲しいです。短いと溶接した部分が酸化するため、キレイな色になりません。
仮止めで気をつけるべき点
・ギャップは0で
・面(つら)の段違い
先ほども書きましたが、TN-Pではギャップを開けずに溶接するので、ギャップは0で仮止めして下さい。
ステンレスという材料は溶けやすく溶接部が詰まりやすいので、1ヶ所仮止めするとその反対側に隙間が空いてしまいやすいです。
溶接棒を使わないで仮止めすると、この状態になりやすいので、仮止めは溶接棒を使うことをオススメします。
仮止めの裏側は酸化してもOK
試験指導員の指示通りに仮止めをしていれば、仮止めする部分は曲げ試験の対象外になる場所を仮止めしていると思います。
溶接棒を使って仮止めすると、初層溶接したときに仮止めした部分だけ裏側が溶け無いという状態になりますが、曲げ試験の対象外なので気にしなくてOKです。
面(つら)の段違いは妥協するな
そしてギャップだけでなく面の段違いにも気をつけること。
面の段違いを妥協してしまうと、初層溶接で開先の裏側に溶けない部分が残りやすくなります。
それだけでなく、最終層の溶接がやりにくくなります。
段違いでも程度によってはテクニックで溶かせる場合もありますが、それに使う神経や時間、労力、リスクを考えれば、素直に仮止めをやり直す方が絶対いいです。
初層溶接
仮止めの時と同様に必ず設備をチェックして下さい。
シールドガスを必ず出すこと
TN-Pの試験で1番恐れなくてはいけないのが、シールドガスの出し忘れです。
これを忘れただけで実技試験はほぼアウトです。
有資格者の更新試験でも結構あるあるなミス。
流量は5mm/min〜7mm/minに調整し、配管内にガスを溜めてから溶接したほうがいいです。
なので、ガスを溜めながら他の準備をすると時間のロスをなくせます。
初層溶接はナメ付けでOK
ギャップ0で仮止めした場合、初層溶接は溶接棒を使わずに母材を溶かすことで溶接していきます。
勘違いする方もいるかもですが、溶接棒を使わないで溶接するのは違反ではありません。
逆にギャップ0で溶接棒を使ってしまうと裏までしっかり溶かせなくなります。
ゆっくり転がし(ローリング)でウィービング
電流は60A〜85Aでゆっくりウィービングしていきます。
この時の電流と溶接のスピードで、初層溶接の裏波が出せるかどうかが決まります。
これは練習によって、自分に合う電流と溶接スピードをみつけるしかありません。
ちなみに溶接は、浮かしではなく転がし(ローリング)をオススメします。
おそらく初心者の方だとウィービングのスピード調整ができない方が多いと思います。
私が覚えたてのころは、ウィービングのスピードがすごく遅くてそのスピードでしか溶接出来なかったので、60Aでやってました。
これだと電流が低めなので、早く進んでしまうと裏側が溶けなくて筋が残ってしまいます。
自分の転がし(ローリング)のスピードに合った電流を、練習で見つけておくことが重要です。
途中で止めても大丈夫
万が一、タングステンが母材に触れてしまった場合や、体勢が辛いときは一旦溶接を止めても大丈夫です。
私自身が溶接覚えたてのころ、先輩に教わったときの話。
「仮止めから次の仮止めまでは途中で溶接を止めてはいけない」と教わりましたが、止めても大丈夫です。
そのかわり、止めたところから少し戻ったあたりから溶接をスタートし、しっかり溶かし直すということを意識すること。
本試験では試験片を回したりできないので、体勢が辛くなりがち。
しかも最初の真下から真横までがかなりキツいので、その場合でも無理せず溶接を止めて体勢を整えてから続きを溶接することをオススメします。
タングステンの離れ過ぎに注意
初層溶接では練習で体に覚えさせたスピードを意識しながら溶接することになります。
しかし、スピードにばかり意識が集中し過ぎているとよくありがちなのですが、母材とタングステンの距離がどんどん離れていくという事象。
最悪はカップ(セラミック)が滑ってトーチがすっぽ抜けてしまいます。

下の図のあたりが体勢的にも1番辛く、滑りやすいので注意です。⇩

上に進むにつれてタングステンが離れないように意識しましょう。
それと、母材とタングステンが離れた状態で溶接すると酸化してしまって溶接部の色が黒ずんでしまいます。
逆に上手くいったときの溶接部はキレイな虹色になるので、色がある程度の目安になります。
母材とタングステンが触れてしまっているのに、そのまま溶接を続けた場合も黒ずんでしまいます。
触れてしまった場合は必ずタングステンを交換しましょう。
※タングステンを研ぐ用のオススメアイテムがこちら⇩
これでタングステンを研ぐとかなりいい感じに仕上げることができます!
1枚あれば現場でも重宝しますし、かなり長持ちするのでオススメ!
最終層の溶接
初層溶接では溶接棒を使いませんでしたが、ここからは溶接棒を使って溶接していきます。
シールドガスはそのままでOK
初層溶接が終わってもシールドガスは入れたままの方が絶対いいです。
しっかり裏波が出ていてキレイな色をしていたとしても、ガスを抜くと更なる溶接によって酸化が進み黒く変色してしまいます。
裏側だけでなく溶接自体にも影響が出てしまうので注意。
棒の太さは2.4ミリがオススメ
初心者の方だと運棒(溶接棒の送り)があまり上手ではないと思いますので、棒の送りが少なめで済むように考えれば2.4ミリがいいです。
しかし、なかには棒をジャンジャン送ってしまうのが癖の人や、その方がやりやすいという方もいるので、そういう方は2.0ミリや1.6ミリがいいと思います。
溶接を止めるときは棒をくっつけておく
溶接を一時的に止めるときは溶接部から棒を離さないようにしたほうがいいです。
その理由は溶接した肉が垂れるのをある程度防ぐことができるからです。
離れてしまった場合や、意図的に離す場合は、棒先にガスを当てながら溶接を切りましょう。
これは試験に限ったことでは無いのですが、溶接部を少しでも酸化させないためのテクニックです。
棒先にガスを当てながら溶接を切ることで、棒先の酸化を防ぎます。
これを忘れてしまったときは棒先の酸化した部分を番線カッターやペンチなどで切断ましょう。
先が酸化した棒を使って溶接すると、そのせいで溶接部が酸化してしまうので注意です。
横向き溶接で肉が垂れる場合の対処法
ステンレスの横向き溶接は炭素鋼に比べ肉が垂れやすいです。
ひどい場合は溶接部の上部がえぐれてしまうこともあります。
下の図は、左側が配管で真横から見た溶接部を表していて、溶接の肉がダレてしまった様子です。⇩

何も考えずにただ溶接すると、図のように溶接幅の上部がマイナスしてしまいます。
こうなると、試験は受かりません。
先程も書きましたが、試験では先に縦向きで半周分を溶接してから横向きに移るのですが、横向きでは縦向きのときよりも電流を少し下げましょう。
電流が高いとその分だけ溶融池が大きくなり、垂れる肉も大きくなるからです。
そして、溶融池に棒を差し込む位置とタイミングが重要になります。
棒を差し込む位置は溶接幅の上側です。

ウィービングでタングステンが上側に向いたとき溶融池に棒を付けて、棒を差し込みながらタングステンが下側に向かっていく感じです。
このウィービングと棒の差し込みは初心者ではなかなか難しいかもしれませんので、"溶接幅の上側に棒を置く"とだけ意識するだけでもかなり違ってきます。
ある程度経験を積むと気付いてくるのですが、溶融池から棒を抜くとその瞬間に少し垂れます。
横向き溶接ではなるべく溶融池から棒を離さないようにするのがコツです。
それと、溶接を切るときはなるべく上側にウィービングした時に切るほうが垂れづらいというのも覚えておくいいです。
※厚手のゴワゴワした皮手袋だと棒の送りは上手くいきません!
オススメの皮手袋がこちら⇩
あとがき
TN-Pをこれから取得しようという方が、熟練者の溶接スピードや溶接電流をそっくり真似しようとしても、技術が追いついていないと上手くいかないものです。
自分に合う細かな電流調整は自分自身が練習によって見つけるしかありません。
そこを見つけれるかどうかが資格の合否を左右するといえます。
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