『ふくしま原発作業員日誌』てどんな本?【書評】イチエフの真実

ふくしま原発作業員日誌 表紙書評
ろいど
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どうも!ロボットのように働くアラフォー会社員、ろいどです!
今回ご紹介する本がこちら⇩

『ふくしま原発作業員日誌』

― イチエフの真実、9年間の記録 ―

著者:片山夏子(東京新聞記者)

発行:2020年2月28日 初版発行

ページ数:459

定価:(本体1700円+税)

難易度:★★★☆☆(普通)

東日本大震災、そして福島第一原発での事故から今年で10年が経ちましたね。

現在の福島第一の敷地内は処理水のタンクだらけという事実をご存知でしょうか?

つい先日、処理水の海洋放出を政府が決定したというニュースが流れました。

漁業関係者に加え、中国や韓国が反対しているというのが世間の印象かと思います。

また、2020年3月には『Fukushima 50』という映画が公開されたこともあり、事故は収束し過去のものだというイメージがより強まっているのではないでしょうか?

一方で、事故当初から今この瞬間もあの過酷な現場「イチエフ」で廃炉に向けて働いている作業員達がいます。

実は私自身も、現在「イチエフ」で働く作業員の1人です。震災までの10年くらいと、震災後は2016年1月から働いています。

この本は、過去9年に渡り作業員が語った真実をまとめた本だということで、同業者がどんな事を記者に語ったのか?と興味を持ち、読んでみました。

こんな方にオススメの本

・イチエフで働く末端の作業員の実情を知りたい!

・事故直後に対応した作業員はどういう動機で「イチエフ」に行ったのか?

・高線量を浴びて健康被害に苦しんでいる作業員の実態とは?

・国や東電の隠ぺい、世間には知られていないイチエフの真実とは?

この記事では、私の感想を交えながら『どんな本なのか?』を書いていきます!

 

『ふくしま原発作業員日誌』てどんな本?書評

この本の見どころは、国や東電が隠したがるような、世間ではあまり知られていない事実が書かれているところですね!

実際に現在のイチエフで廃炉作業に関わっている私でさえ知らなかったことも多く書かれており、時間を忘れるほど夢中になって読みました。

ただ専門用語も多く使われているため、一般の方には読みづらい感じはあるかもしれません。

『ふくしま原発作業員日誌』の構成

本の最初には、略図やイメージ図などを多めに使い、福島第一原発の構内や原子炉、タービンの図解や汚染水の経路説明など「イチエフ」を語る上での前提知識が詳しく載せられています。

原発構内図

汚染水をめぐる構図

その後のページで、震災直後の2011年から2019年まで起きた出来事と共に、作業員へのインタビュー内容が年度順に書かれているという構成です。

⇩に私が気になった出来事や内容を、年度順に箇条書きでピックアップしてみました。

2011年

・重油タンクの油回収作業

・電源復旧のためのケーブル引き

・被曝線量の上限で現場を去る作業員

2012年

・内側が超高線量である格納容器の穴あけ作業

・「脱原発依存」「再稼働」の矛盾

・退社する東電社員、留まる東電社員

・避難によって住居を転々と…

・避難者と避難先地元住民との軋轢

・家族の崩壊、離婚、自殺、高齢者が生きる希望を失い衰弱

・線量計を現場に持っていかない問題、被曝隠し

・違法な多重派遣による、賃金や手当のピンハネ

・賠償金「もらえる人」「もらえない人」

・ちりとりで汚染水をすくう、線量計を持たず現場へ20回

・3号機タービン建屋内地下電源ケーブル敷設時、高濃度汚染水に足が…

・原発から20キロ圏内の海洋汚染

2013年

・早すぎた「事故収束宣言」がもたらした作業員への悪影響

・電力社員の自己退職問題

・凍土遮水壁470億円

・吉田所長が食道ガンで亡くなる

・フランジタンクから処理水が外洋へ

・作業員の質悪化による悪循環

・特定秘密保護法可決

2014年

・10時間越えの違法労働「人間扱いされていない、奴隷だった」

・タンク上下作業、資格なし溶接工

2015年

・重機オペレーターが3カ所に転移ではない独立したガン

2016年

白血病になった溶接工(一部抜粋⇩)

男性の白血病は、遺伝性でもウイルス性でもなかった。入院後、抗がん剤治療で髪が抜け、高熱と吐き気が続いた。「何もかもが灰色に曇って見えた。当時、保育園児だった子のランドセルを背負う姿が見られないと絶望した」。ひどい口内炎で食事もできず、免疫力が落ちて口内の細菌に感染し、歯を何本も抜いた。食べ物の匂いが生ゴミのように感じた。腹痛に七転八倒し、下痢で1日40回ぐらいトイレに行った。「幼い3人の子を残して、自分がおらんようになったら…。何が何でも生きなくては」。だが思いと裏腹に免疫力が落ちていた。

P339より

・東電社員の運転員が甲状腺ガン。初の労災認定

2017年

・3号機デブリ、自走式サソリ型ロボット開発費十数億円

2018年

・2号機の格納容器内の調査でデブリ見つかる

・凍土遮水壁、維持費用電気代等で年間十数億円、完全に凍らせる事は難しく効果は限定的

2019年

・イチエフに旨味がなくなってきた

・1、2号機排気筒の切断作業

・労災認定の実態

『ふくしま原発作業員日誌』の内容

原発事故の状況や出来事を詳しく説明しながら、そこに携わる作業員一人ひとりの心情が書かれています。

読み進めるほどに、「東電が外面を良くしようする対応の裏側で、協力企業とその作業員達が苦難を強いられる」という構図が浮かび上がってきます。

また、震災後の地域の諸事情や、世間から非難を浴びる電力社員の苦悩などについても触れられていました。

私にとって一番衝撃的だったのは、高線量作業を行った作業員が白血病やガンになってしまった人がいるという事実です。

これらの人達は、線量計を持たずに作業をしたためにどれだけ被爆したか正確にはわからない、というような無茶をしており、わかっているだけでもビックリするような数値の被曝をしていました。

そして、高線量作業をした作業員はほとんどが、被曝可能な値の上限あたりまで線量を浴びたら使い捨てになってるというのも事実。

こういう人達が思っていた以上に多くいることには驚きました。また過酷な作業なのに日給8000円とか安い賃金で働いていたりなど。。。

こういった犠牲があってこそ今があるのだな、としみじみ思いました。

『ふくしま原発作業員日誌』を読んだ感想・気付き

震災直後の部分を読んだら、忘れかけていた震災当時のいろいろな不安感、閉塞感などのドス黒くなる気持ちを思い出しました。

私自身は事故直後から何年かは、怖くて原発で働こうとは思わなかったのですが、事故直後に対応した作業員はどういう動機で「イチエフ」に行ったのか?と疑問に思っていましたが、この本を読むことでそれがわかってきました。

色々な考え方の人がいますが、地元の作業員だと「自分たちで故郷をなんとかしたい」「子供たちが安心して住めるようにしたい」「地元で暮らし働きたい」という考えのようです。

また、多くの人が特定の条件下で起きる「自分がやらなくて誰がやるんだ」という心理なのだとわかりました。

例えると、「川で子供が溺れているところに遭遇した時」と同じような心理かなと思います。

男は「かっこつけたい生き物」でもありますし、それでいて「使命感」の強い方達が立ち向かったのでしょう。

テレビの報道を見て駆けつけたという方もいたそうです。

しかし、超高線量の状況下では「勇気ある撤退」が必要だったと思います。カラダを壊してしまってからでは遅いのだから。

私自身は現在ここで働いていますが、最近ではかなり仕事が減ってきてゼネコン企業もあまり見かけなくなり、危険手当等の賃金もどんどん下がってきています。

そろそろこの業界も潮時かなと考えています。

今回この本を読んだことで、自分なりに震災後の10年を振り返ることができました。

原発事故に限らず震災については、それぞれの人にそれぞれのドラマがあります。

みなさんも、震災や原発事故に直面したあの当時「自分の心に何を刻んだのか?」を思い出してみてはいかがでしょうか?

『ふくしま原発作業員日誌』の著者紹介

片山夏子 (かたやま・なつこ)

中日新聞東京本社(「東京新聞」)の記者。大学卒業後、化粧品会社の営業、ニートを経て、埼玉新聞で主に埼玉県警担当。出生前診断の連載「命生まれる時に」でファルマシア・アップジョン医学記事賞の特別賞受賞。中日新聞入社後、東京社会部遊軍、警視庁を担当。特別報道部では修復腎(病気腎)移植など臓器移植問題や、原発作業員の労災問題などを取材。名古屋社会部の時に2011年3月11日の東日本大震災が起きる。震災翌日から、東京電力や原子力安全・本院などを取材。同年8月から東京社会部で、主に東京電力福島第一原発で働く作業員の取材を担当。作業員の事故収束作業や日常、家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載中。2020年、同連載が評価され、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞受賞。現在、特別報道部所属。

カバー袖 著者紹介より

『ふくしま原発作業員日誌』を読んでみよう!

ろいど
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震災後10年を迎えた今、ふくしま原発について考えを深めるいい機会かもしれないですね!

原発事故の関連本

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他にもこんな原発事故関連の本があります!

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